人はなぜ「希望の言葉」に弱くなるのか
私は48年間、出版社を営み、数えきれないほどの文章と向き合ってきました。
本、雑誌、原稿、企画書。
人の心を動かす言葉には、必ず“型”があります。
末期の前立癌と診断され、「覚悟をしてください」と言われたとき、
私は生きる希望という言葉の重みを、身をもって知りました。
だからこそ、希望を利用する言葉 には、誰よりも慎重になってしまいます。
ふくえんちという副業の案内を見たとき、
最初に感じたのは「懐かしさ」でした。
これは、かつて何度も見てきた構文とよく似ていたからです。
ふくえんちに並ぶ“安心させる言葉”
ふくえんちで使われている表現には、明確な特徴があります。
・初心者でも大丈夫
・難しい作業は不要
・今の生活を変えずに
・将来に備える
これらは、読み手の不安を一時的に和らげる言葉です。
出版の世界では、
内容よりも先に感情を包み込む言葉 として使われます。
問題は、その後に
「具体的な中身」が提示されているかどうかです。
ビジネスの骨格が見えにくい理由
副業であっても、立派な経済活動です。
本来であれば、次の点が説明されるべきです。
・どんな価値を生むのか
・誰が対価を払うのか
・継続性はどこにあるのか
ふくえんちの場合、
これらの核心部分が、意図的にぼかされている印象を受けました。
代わりに強調されるのは、
・未来の可能性
・成功者の存在
・行動しないリスク
これは、出版の世界で言えば
「帯だけが立派で本文が薄い本」に近い構造です。
ノウハウコレクターとしての私の反省
私はこれまで、情報商材をいくつも買ってきました。
内容を読んだ瞬間は満足する。
しかし、現実は何も変わらない。
その理由は明確です。
行動以前に、仕組みを理解していなかったから。
ふくえんちも同様に、
「やる気」や「期待」だけを先に与え、
実務の設計を後回しにしているように感じました。
詐欺かどうかより重要な視点
ふくえんちは、現時点で違法だと断定できる材料は見当たりません。
しかし私は、
詐欺かどうかよりも、次の点を重視します。
・説明責任を果たしているか
・読み手が冷静に判断できる情報量か
・誇張された期待を与えていないか
これらが欠けている場合、
結果的に人を傷つけることになります。
善意であっても、不十分な説明は不誠実です。
出版人として見た「危うさ」
言葉は、人を救うことも、迷わせることもできます。
ふくえんちの文章は、救いの側に寄っているようで、
実は判断力を奪いやすい構成になっています。
人生の岐路に立つ人ほど、
「簡単」「安心」という言葉に引き寄せられます。
だからこそ、
情報を出す側には、より重い責任があると私は思います。
私が伝えたい結論
ふくえんちは、希望を与える言葉は多いものの、
ビジネスとしての実体は非常に見えにくい副業です。
期待だけで進めば、
また新たなノウハウコレクターを生む可能性があります。
人生は、残り時間が有限です。
私自身、死を意識してから、
「無駄な遠回り」を何よりも避けるようになりました。
⚠ 最後に一言だけ
参加を検討する前に、
どうか一度、静かに問いかけてください。
「これは、私の人生に本当に価値を残す選択か」
その問いに、
自分の言葉で答えられない副業には、
足を踏み入れない勇気も必要です。
